第三回再生医科学シンポジウムレポート
〜炎症性腸疾患治療の臨床応用を目指して〜
ステリック再生医科学研究所では、去る2008年2月29日に「炎症性腸疾患治療の臨床応用を目指して」をメインテーマとする第三回再生医科学シンポジウムを開催いたしました。
未来へつながる新たな治療薬を
IBD(炎症性腸疾患)は、近年日本でも患者数が急激に増加しているにもかかわらず、現時点において根治療法は確立されておりません。粘膜免疫制御による治療戦略が近年盛んに行われていますが、これには課題も残されています。当シンポジウムは、従来の視点と異なる全く新しい治療戦略について、最新の研究結果・臨床知見を多くの方に知っていただくことを目的に開催いたしました。また、前述のこうした現状に対し、粘膜の再生、粘膜上皮の線維化抑制という日本発の2つの新たな視点による治療戦略を加えることによって、患者のQOLを高める治療可能性を強く示唆する研究を紹介いたしました。
シンポジウム当日は、医師・研究者、製薬企業、患者の方々を中心に多数の方々にお越しいただき、盛況のうちに無事終了することができました。
ご挨拶・ご講演いただいた先生方、ご聴講いただいた皆様に厚く御礼申し上げるとともに、開催報告として当日の発表を報告いたします。
【オープニングリマークス】
財団法人国際医学情報センター理事長・新潟大学名誉教授 朝倉 均 先生
現在、日本炎症性腸疾患研究会名誉会長、厚生労働省特定疾患対策懇談会委員及び厚生科学審議会委員等務め、以前は、ステリック再生医科学研究所代表取締役の米山、新潟大学の鈴木講師とともに潰瘍性大腸炎やクローン病の研究に従事。
現在、欧米及び本邦において急増する潰瘍性大腸炎及びクローン病患者がその生活に大きな障害を抱えて暮らしている現状がある。このような既存の治療薬では根治に至らなかった多数の難病疾患に対して、iPS細胞等を用いた再生医療や遺伝子治療が注目され、世界的にその研究開発が行われ始めている。しかしながら、一刻も早く新規治療薬が臨床現場に届くことも求められており、ステリック再生医科学研究所では新規の核酸医薬を用い、線維化による腸狭窄を標的とした独創的かつ臨床現場に即したアプローチでクローン病を治療するという新展開を紹介する。
【特別講演1】
「炎症性腸疾患における粘膜免疫制御と粘膜再生を目指した治療戦略」
関西医科大学内科学第三講座 岡崎 和一 教授
厚生労働省難治性疾患克服研究事業−炎症性腸疾患の画期的治療法に関する臨床研究−の班長として、日本におけるIBDの患者数・病因・病態生理を含む全体像をレビューし、新たな治療戦略の必要性を訴えた。腸管粘膜免疫において重要な働きを行うM細胞を標的としたドラッグデリバリーシステムを構築し、このシステムを用いたマクロファージの活性低下及び抗炎症によるIBDの臨床試験の結果を得た。さらに、再生医療という点からは、増殖因子であるbFGFを用いた腸上皮分化促進療法を開発した。また、臨床応用に向けて患者の負担が少ないように自己脂肪組織から分離培養した脂肪組織由来幹細胞移入し、粘膜再生治療効果についてその機序とともに確認した。以上からIBDの治療戦略として、腸特異的な炎症制御及び自己組織による粘膜再生促進によりIBD患者のQOLを高める治療戦略を提案。
【特別講演2】
「炎症性腸疾患の治療と新規治療法開発の戦略」
新潟大学医歯学総合病院第三内科 鈴木 健司 講師
IBDに対し、「抗炎症療法」、「分化再生療法」、「抗線維化療法」という3つの治療戦略のコンビネーションが重要であると提案。特に抗炎症及び分化促進作用を同時に有する抗CXCL-10抗体による治療実験、ヒトHGFの遺伝子ベクターを用いた再生促進による治療実験を重点としている。しかしながら、前述の生体物質を全身投与するには、副作用制御の問題が生じる恐れがある。それを回避するため、腸選択的な新しいドラッグデリバリーシステムの開発が重要である。そこで局所的に薬剤を効率的に送達、徐放させる方法を確立し、核酸医薬、組換えタンパク質、低分子化合物を用いた実験系において、有効性を示すことができた。以上より、IBD治療において副作用の軽減が見込まれるドラッグデリバリーシステムを用いて上記3つの治療戦略をなすことが可能となり、抗炎症療法のみでは改善できなかった病態に関してもこれらを治療できる可能性を見出した。
【基調講演1】
「Intestinal fibrosisを標的とした核酸医薬によるクローン病治療の新展開」
株式会社ステリック再生医科学研究所 代表取締役 米山 博之
「クローン病狭窄」は現在、侵襲的な治療しか存在しない病態である。狭窄はIBDにおいて、患者のQOLを著しく減少させる原因となっており、外科的手術後も10年で約半数が再手術となるという現状がある。当研究所で機能同定したG-familyは狭窄の原因となる線維化を制御し、さらに炎症性細胞浸潤を抑制することによる抗炎症作用をも同時に有している。また現在臨床応用が進められている核酸医薬は主に癌、感染症を中心に進められているが、消化管については報告がない。そこで当社では、消化管においてこのG-family遺伝子群を独自のドラッグデリバリーシステムを用いて核酸医薬STNM-01で治療することにより、抗線維化療法という新たな治療戦略を打ち出した。また、STNM-01は他領域への応用性も有しておりこの点でも期待される。
【クロージングリマークス】
東京医科歯科大学消化器内科 渡辺 守 教授
IBDを含む消化器領域は、臨床医が研究をしていることが多く、早く治療薬に結びつく領域である。また当領域で得られた知見は他の領域へと応用されることが多い。現在、抗TNF-α等が免疫異常を是正する薬として大変注目されているが、炎症抑制のみでは潰瘍性大腸炎の潰瘍、クローン病の狭窄を治すことが困難な症例も多い。これに対し、組織の再生や修復、クローン病狭窄を治すという日本オリジナルな方法の研究が現在進められており、既存のアプローチでは成し得ない新たなブレイクスルーを達成されると期待される。また、こういったシンポジウムを機会にますます新しい治療法が進むことが期待される。
当社では、患者様へ安心かつ確実な信頼できる治療薬を一日でも早くお届けするため、STNM-01の臨床応用へ向けて尚一層研究開発を進めてまいります。